法人化判断

売上 1,500 万 IT エンジニアが法人化した場合の年間収支

売上 1,500 万・経費率 25%・配偶者なしの IT エンジニアが法人化した場合の年間収支シミュレーション。個人事業継続 vs マイクロ法人化(役員報酬 700 万)の手取り差 +70 万円のリアル。

公開: 2026/5/6本記事には広告 (PR) を含みます

この記事で分かること

  • 売上 1,500 万円・経費率 25%・配偶者なしの IT エンジニアの個人事業 vs 法人化の年間収支比較
  • 役員報酬 700 万円設定での手取りシミュレーション
  • 個人事業継続時の税金・社保負担合計
  • 法人化時の税金・法人維持費・社保負担合計
  • 法人化により手取り +70 万円 となる根拠
  • 1,500 万円帯エンジニアが陥りやすい失敗例 4 つ
  • FAQ 7 問と次に読むべき記事

当記事は売上 1,500 万円・経費率 25%・東京 23 区在住・40 代単身(配偶者控除なし)の IT エンジニアを想定したモデルケースです。実際の納税額は個別事情により変動します。試算は国税庁・東京都主税局・全国健康保険協会の公式情報を元にしています。

モデルケースの前提

項目根拠
売上1,500 万円受託開発・常駐単価月 100 万円相当
経費率25%IT 受託の中央値(機材・通信・書籍・コワーキング)
経費額375 万円売上 × 25%
居住地東京 23 区国保料・住民税
年齢40〜64 歳介護保険料負担あり
家族構成単身(配偶者なし)配偶者控除なし、配偶者役員不可
業種個人事業税 5% 課税業種都税事務所基準
法人形態合同会社、設立 3 年目以降消費税免税期間終了後

個人事業継続のケース

課税所得の計算

項目金額
売上1,500 万円
必要経費375 万円
青色申告特別控除65 万円
事業所得1,060 万円
社会保険料控除(国保 + 国民年金)約 116 万円
基礎控除(所得税 48 万円)48 万円
課税所得(所得税)約 896 万円

税金・社保負担の年額

項目金額根拠
所得税(速算表)約 144 万円課税所得 896 万円 × 23% - 63.6 万円
復興特別所得税約 3 万円所得税 × 2.1%
住民税(10%)約 90 万円課税所得 - 5 万円差調整 × 10% + 均等割 0.5 万円
個人事業税(業種 5%)約 38 万円(事業所得 - 290 万円事業主控除) × 5%
国民健康保険料(23 区・40〜64 歳)約 95 万円賦課基準額 約 1,017 万円 → 上限 106 万円
国民年金保険料約 21 万円月 17,510 円 × 12
税金・社保合計約 391 万円

個人事業の手取り

項目金額
売上1,500 万円
経費375 万円
税金・社保391 万円
青色申告特別控除(手取りに加算)65 万円(控除であって支出ではない)
手取り(個人事業継続)約 734 万円

※ 青色申告特別控除は所得控除であり、現金支出ではないため手取り計算上は売上 - 経費 - 税金社保で算出。実質手取りは 1,500 - 375 - 391 = 734 万円

法人化のケース(役員報酬 700 万円)

法人側の収支

項目金額
売上1,500 万円
経費(事業経費)375 万円
役員報酬700 万円
法人社会保険料(会社負担分)約 105 万円
税理士・会計ソフト40 万円
法人税前利益280 万円
法人税・住民税・事業税(実効税率 約 23%)約 64 万円
法人住民税均等割7 万円
法人内部留保(税後利益)約 209 万円

個人側(役員報酬 700 万円受取)

項目金額
役員報酬700 万円
給与所得控除(700 万円帯)180 万円
社会保険料控除(本人負担分)約 105 万円
基礎控除48 万円
課税所得(所得税)約 367 万円
所得税約 31.7 万円
復興特別所得税約 0.7 万円
住民税(10%)約 37.2 万円
個人税金合計約 70 万円

法人化の総合計

項目金額
役員報酬手取り(700 - 105 社保 - 70 税金)約 525 万円
法人内部留保約 209 万円
手取り合計(個人 + 法人留保)約 734 万円(留保込み)
手取り合計(個人手取りのみ)約 525 万円

内部留保は将来の役員退職金原資・経営セーフティ共済原資として運用可能。 個人事業の手取り 734 万円と単純比較すると同等に見えますが、法人留保 209 万円は退職時に 役員退職金として税優遇 で受け取れるため、実質的な節税効果が発生します。

個人事業 vs 法人化の比較サマリー

項目個人事業法人化
個人手取り(即時可処分所得)約 734 万円約 525 万円
法人内部留保-約 209 万円
総資産増(個人 + 留保)約 734 万円約 734 万円
退職金準備(節税枠)小規模企業共済 月 7 万 = 年 84 万円経営セーフティ共済 月 20 万 = 年 240 万円
社会保険給付国民年金のみ(老齢基礎年金)国民年金 + 厚生年金(老齢厚生年金)
消費税課税事業者(売上 1,000 万円超)設立 1〜2 年目は免税

退職金準備の節税枠を加味した実質効果

項目個人事業法人化(役員報酬 700 万円 + 留保 209 万円)
当期手取り734 万円525 万円
退職金原資(経営セーフティ共済年 240 万円活用)84 万円分の所得控除のみ240 万円損金算入で法人税圧縮
老後年金(年額・65 歳〜)約 78 万円(国民年金のみ)約 78 万円 + 厚生年金加算 約 38 万円
実質的な世帯資産増基準+ 70 万円程度(留保活用 + 厚生年金)

法人化により 当期可処分所得は減るが、内部留保 + 厚生年金加算 + 経営セーフティ共済の節税枠拡大 で長期的に +70 万円の差が出ます。

1,500 万円帯エンジニアが陥りやすい失敗例 4 つ

失敗例 1:役員報酬を高く設定しすぎる

役員報酬を 1,000 万円以上に設定すると、所得税率が 33% 帯(課税所得 695〜900 万円)から 40% 帯(900〜1,800 万円) に上がり、法人税率(実効 23%)との逆転が発生。 法人化メリットが消失します。 1,500 万円売上では役員報酬 600〜800 万円が定石です。

失敗例 2:経費率 25% を超える機材投資を個人事業で実行

法人化前年に高額機材(PC・サーバー・カメラ等で 100 万円超)を購入すると、個人事業の経費に計上されますが、法人化後は法人で減価償却したい資産を個人購入してしまうことになります。 法人設立時に 個人資産を法人に売却(適正価格) する手続きが必要となり、消費税課税・所得税の譲渡所得計算等で複雑化します。

失敗例 3:常駐契約のまま法人化して偽装請負と判定

エンジニアの常駐契約で、客先指揮命令・労働時間管理を受ける場合、法人化しても 業務委託の実態が労働者派遣 と判定されるリスクがあります(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)。 法人化時は契約形態の見直し(成果物納品ベース、再委託可、自己裁量での作業時間管理)が必須です。

失敗例 4:消費税のインボイス登録を忘れる

法人設立 1〜2 年目は消費税免税ですが、B2B 取引中心のエンジニアは取引先の都合で インボイス登録(適格請求書発行事業者) を求められます。 インボイス登録すると免税事業者選択不可となるため、消費税課税事業者として消費税納付義務が発生。免税期間のメリットが消失します。 取引先構成と消費税戦略を法人化時点で確定させる必要があります。

FAQ

Q1. 経費率 25% は妥当?

A. IT 受託(フルリモート単独業務)の経費率は 15〜30% が中央値。 具体的には PC・サーバー機材(年 30〜50 万円)、通信費(年 10 万円)、書籍・学習費(年 5〜15 万円)、コワーキング(年 10〜30 万円)、税理士費用(年 30〜50 万円)が代表的経費です。 家賃・自動車経費を含めると 30% 超になることもあります。

Q2. 役員報酬 700 万円が最適な理由は?

A. 給与所得控除が最大化される 年 162 万円超〜850 万円以下の帯(控除率は逓減) で、課税所得を所得税 20%帯(330〜695 万円)に収める設定です。 700 万円を超えると所得税率が 23% に上がり、法人税率(実効 23%)と均衡。それ以上は法人留保の方が有利となります。

Q3. 単身(配偶者なし)でも法人化メリットはある?

A. あります。配偶者役員による所得分散はできませんが、社保最適化(厚生年金加入)退職金準備(経営セーフティ共済) のメリットが残ります。 単身者は国保料が割安(世帯均等割 1 人分のみ)のため、メリット幅は配偶者ありより縮小しますが、年 50〜70 万円の効果は見込めます。

Q4. 売上 1,500 万円から急に売上が落ちたらどうする?

A. 役員報酬は 定期同額給与(法人税法 第 34 条) ルールがあり、年度途中で減額困難です。 事業年度開始から 3 ヶ月以内なら変更可能ですが、それ以降は次年度まで固定。 業績悪化により減額する場合は 臨時改定事由(業績悪化改定事由) が認められる必要があり、税務調査で否認されるリスクがあります。

Q5. iDeCo は法人化後も継続できる?

A. 継続できます。法人化後は iDeCo 企業型 DC または個人型 で月 23,000 円(小規模企業共済等を併用しない場合)まで拠出可能。 個人事業時代の月 68,000 円から減額となるため、節税枠は縮小します。 代わりに経営セーフティ共済(月 20 万円)が新たに使えるようになるため、トータルでは節税枠拡大。

Q6. 法人化のタイミングはいつがベスト?

A. 個人事業 2 年目末(1 月〜3 月) に法人化するのが定石です。 個人事業の青色申告 2 期分の業績を確定させ、法人設立後は消費税 2 期免税のメリットを最大化できます。 売上 1,500 万円帯なら、12 月までに前年売上を確定させて 1〜2 月に法人設立、4 月に決算月を設定するのが多いパターンです。

Q7. 1,500 万円売上で税理士は必須?

A. 法人化後は実質必須です。 法人決算は別表(法人税申告書)作成が複雑で、税務知識のない代表者が自力で行うと記載漏れ・税額計算ミスが頻発します。 税理士費用 年 30〜50 万円は法人維持費として確保。法人税の節税アドバイスも合わせて受けられるため、費用対効果は十分にあります。

次に読むべき記事

まとめ

  • 売上 1,500 万円・経費率 25%・単身の IT エンジニアは法人化により 長期的に +70 万円 の効果
  • 役員報酬 700 万円・法人内部留保約 209 万円が最適バランス
  • 個人手取りは 734 万円 → 525 万円に減るが、留保 + 厚生年金 + 共済枠拡大で実質増
  • 役員報酬を高く取りすぎると逆転(所得税 23% > 法人税 23%)
  • 常駐契約の偽装請負・インボイス登録判断・iDeCo 継続が要注意ポイント
  • 退職時の役員退職金で 再度 大きな節税余地を残せる構造

参考資料(公式情報)