開業届

開業届の職業欄|業種別の個人事業税率一覧と書き方の注意点

開業届の「職業」欄の記入は個人事業税の課税対象判定に直結。70 業種の事業税率(3〜5%)と非課税業種、職業欄の具体的な書き方の例を業種別に解説。

公開: 2026/5/5本記事には広告 (PR) を含みます

この記事で分かること

  • 開業届の 「職業欄」の正しい書き方 と、税務署・都道府県税事務所がここから何を判断しているか
  • 個人事業税の 法定 70 業種 全体像と、業種ごとの 税率(3% / 4% / 5%)一覧
  • IT エンジニア・ライター・デザイナー・コンサル・物販など、現代的な業種の 法定業種への当てはめ方
  • 個人事業税の 290 万円の事業主控除 と、税額シミュレーション 3 例(所得 400 万 / 700 万 / 1,000 万)
  • 法定業種に該当しない業種」(フリーランスエンジニア・ライターなど)の判定の実情と都道府県別の運用差
  • 失敗例 4 つ(職業を「フリーランス」と書く、業種別税率の見落とし、複数業種の按分ミス、開業時の業種選択誤り)と回避策
  • FAQ:職業変更時の届出、複数業種、海外取引、デジタル業種の判定

当記事は地方税法・東京都主税局・大阪府総務部税務局・国税庁公式サイトを参照したリサーチベースの解説です。法律・税務の最終判断は所轄税務署または都道府県税事務所、税理士にご確認ください。法定 70 業種の判定や運用は都道府県により細かく異なる場合があるため、最新情報は各都道府県税事務所サイトを併せてご確認ください。

開業届の「職業欄」が個人事業税を左右する

開業届には「職業」を記入する欄があります。一見ただの自由記述に見えますが、ここに書く内容で 個人事業税の課税対象になるか・税率が何 % になるか が決まる、極めて重要な項目です。

地方税法 第 72 条の 2 で定められた 法定 70 業種 に該当する事業者には個人事業税が課されます。税率は業種により 3% / 4% / 5% の 3 段階。法定業種に該当しなければ非課税です。

開業届の職業欄を「フリーランス」「自営業」のような曖昧な書き方にすると、都道府県税事務所が業種判定で迷い、結果として誤った税率で課税される(または問い合わせが来る)リスクがあります。

法的根拠:地方税法第 72 条の 2

個人の行う第 1 種事業、第 2 種事業及び第 3 種事業に対しては、所得を課税標準として、当該事業の所得の生じた時期において当該事業の事務所又は事業所所在の道府県において、その個人に事業税を課する。

法定業種に該当しない事業(たとえば文筆業のうち雑誌記事執筆)は個人事業税の対象外と運用されるケースもあります。詳細は後述します。

個人事業税の業種別税率(法定 70 業種)

法定 70 業種は 3 つの「種」 に分類されます。

第 1 種事業(37 業種):税率 5%

商工業全般。最も広く該当します。

業種例該当する具体業種
物販業物品販売業、雑貨販売、ネットショップ、ECサイト運営
不動産業不動産貸付業(一定規模以上)、不動産売買業
製造・加工製造業、印刷業、出版業
飲食業飲食店業、料理店業
仲介・代理周旋業、代理業、仲立業、問屋業
旅館・運送旅館業、運送業、駐車場業
サービス業写真業、席貸業、不動産売買業

第 2 種事業(3 業種):税率 4%

水産・畜産・薪炭製造の特殊な業種で、現代では該当者が少数。

  • 畜産業
  • 水産業
  • 薪炭製造業

第 3 種事業(30 業種):税率 5% または 3%

サービス業・自由業の中で、専門性が高い業種。一部は 3% の軽減税率。

税率 5% の主な業種税率 3% の主な業種
医業、歯科医業、薬剤師業あんま・マッサージ・指圧
獣医業、弁護士業、司法書士業、行政書士業はり・きゅう
公認会計士業、税理士業、社会保険労務士業装蹄師業
弁理士業、不動産鑑定業
建築士業、設計監督者業、不動産代理仲介業
美容業、理容業、クリーニング業
写真業、設計監督者業、コンサルタント業
デザイン業、諸芸師匠業

東京都の場合、東京都主税局:個人事業税の対象業種 で全 70 業種が公開されています。

現代的な業種の法定業種への当てはめ方

法定 70 業種は地方税法制定当時の業種分類のため、現代の業種をどこに当てはめるかが課題です。実務的な当てはめは以下の通り。

IT 関連

業種法定業種への当てはめ税率
Web エンジニア(受託開発)コンサルタント業 / 製造業5%
システムエンジニアコンサルタント業5%
インフラエンジニアコンサルタント業5%
Web デザイナーデザイン業5%
グラフィックデザイナーデザイン業5%
アプリ開発者製造業 / コンサルタント業5%
プログラマー(受託)コンサルタント業5%

クリエイティブ・執筆系

業種法定業種への当てはめ税率
ライター(雑誌・Web 記事)法定業種に該当しない場合あり0% (非課税)
書籍執筆業(著述業)法定業種に該当しない場合あり0% (非課税)
編集業製造業(出版業)または非課税5% or 0%
翻訳業法定業種に該当しない場合あり0% (非課税)
写真家写真業5%
動画クリエイターデザイン業 / 製造業5%

ライター・著述業・翻訳業 は法定 70 業種のいずれにも明示的に含まれないため、実際の業務内容により非課税になるケースが多いです。ただし、編集業務を含む場合や雑誌制作業務として運用すると課税対象になる可能性があるため、所轄都道府県税事務所に確認するのが安全です。

コンサル・専門サービス

業種法定業種への当てはめ税率
経営コンサルタントコンサルタント業5%
マーケティングコンサルコンサルタント業5%
中小企業診断士コンサルタント業5%
FP(独立系)コンサルタント業5%
講師業(研修・セミナー)諸芸師匠業5%
カウンセリング業コンサルタント業5%

物販・サービス系

業種法定業種への当てはめ税率
ネットショップ運営物品販売業5%
個人輸入販売物品販売業5%
アフィリエイト業広告業(第 1 種に該当)5%
YouTuber・配信者広告業 / 諸芸師匠業5%
整体師(無資格)あんま等に準じる場合3% or 5%

個人事業税の計算方法

個人事業税の計算式は以下の通り。

個人事業税 = (事業所得 - 290 万円) × 税率(業種により 3〜5%)

事業主控除 290 万円 が大きな緩衝になっており、所得 290 万円以下なら税額はゼロです。

課税標準(事業所得)の計算

事業所得 = 売上 - 必要経費
        - 青色申告特別控除(事業税の計算時は無視)

ポイント:個人事業税の計算では 青色申告特別控除(65 万円)は控除されません。所得税・住民税では控除されますが、事業税では別の計算ルールです。

税額シミュレーション 3 例

例 1:年間事業所得 400 万円(Web エンジニア・受託開発、税率 5%)

個人事業税 = (400 万 - 290 万) × 5%
        = 110 万 × 5%
        = 5.5 万円

例 2:年間事業所得 700 万円(Web デザイナー、税率 5%)

個人事業税 = (700 万 - 290 万) × 5%
        = 410 万 × 5%
        = 20.5 万円

例 3:年間事業所得 1,000 万円(コンサルタント、税率 5%)

個人事業税 = (1,000 万 - 290 万) × 5%
        = 710 万 × 5%
        = 35.5 万円

所得が高くなるほど 法人化(法人税率 23.2%)と比較した個人事業税の負担感 が増します。所得 800〜1,000 万円が法人化検討ラインの 1 つです(詳細は 法人化は売上いくらから を参照)。

個人事業税の納付タイミング

  • 都道府県税事務所が 8 月 に税額を計算して通知
  • 8 月末まで に第 1 期分、11 月末まで に第 2 期分を納付
  • 確定申告書の事業所得情報をもとに自動計算(事業税の自主申告は不要)

法定業種に該当しない業種の判定の実情

ライター・著述業・翻訳業のように、法定 70 業種に明示されない業種は 都道府県により判定が異なる ことが知られています。

東京都の運用例

当該業種が法定列挙された業種以外であっても、その業務の実態により法定業種のいずれかに該当すると判断される場合は課税対象。

東京都では「文筆業のうち、編集業務や出版業務の実態がある場合は第 1 種事業」、「純粋な原稿執筆のみは法定業種に該当せず非課税」のような運用が一般的です。

確認方法

業種判定に迷う場合、以下の手順で確認します。

  1. 所轄都道府県税事務所 に電話で業務内容を伝えて判定を依頼
  2. 過去の確定申告書や業務契約書を提示
  3. 必要に応じて書面回答を取得

実務的には、開業届の 「事業の概要」欄に詳しく記載 しておくと、都道府県税事務所側の判定がスムーズです。

失敗例 4 つと回避策

失敗 1:職業を「フリーランス」と書く

最も多いミス。「フリーランス」「自営業」「個人事業主」は職業ではなく 就業形態の名称 です。これを書くと業種判定で「業種不明」扱いになり、税務署や都道府県税事務所から問い合わせが来ます。

回避策: 具体的な業種名を書く。「Web エンジニア(受託開発)」「ライター業」「経営コンサルタント業」のように記述。

失敗 2:業種別税率の見落とし(あんま等の 3% 軽減)

第 3 種事業の中で 3% の軽減税率 が適用される業種(あんま・マッサージ・指圧、はり・きゅう、装蹄師)を見落とし、5% で計算してしまうケース。

回避策: 該当業種の場合、開業届の事業の概要欄で 「あんま業(地方税法第 72 条の 2 第 10 項に該当)」 のように具体的根拠を記入。

失敗 3:複数業種の按分ミス

物販業と執筆業を兼ねる場合、物販業(第 1 種、5%)部分は課税対象、執筆業部分は非課税対象になる可能性があります。これを按分計算せず、全額を 5% 課税してしまうミス。

回避策: 複数業種の場合、確定申告書の 「事業所得の内訳」 で業種別に売上を区分。都道府県税事務所が按分計算してくれます。

失敗 4:開業時の業種選択を「軽い気持ちで決めてしまう」

開業届の職業欄が後の事業内容と乖離してくるケース。たとえば「Web デザイナー」で開業したが、実態はコーディング受託(エンジニア業)に近い場合、業種判定が変わる可能性があります。

回避策: 業種が変わってきたら、異動届出書(屋号・職業変更) で更新。詳細は 屋号・職業変更の手続き を参照。

FAQ

Q1. 職業を変更したい場合は?

A. 異動届出書(個人事業の開業・廃業等届出書) で変更を届け出ます。屋号変更と同じ様式を使い、事業の概要欄に新業種を記載。「廃業届」を出して新規開業ではなく、変更届で対応するのが原則。

Q2. 複数業種を兼業している場合、税率はどうなりますか?

A. 業種ごとに別税率で計算 されます。物販業(5%)と医業(5%)を兼業なら一律 5%、物販業(5%)とライター業(非課税)の兼業なら、ライター業部分は非課税。確定申告書の事業所得内訳で業種別売上を明確化します。

Q3. 海外取引のみの業種は個人事業税の対象になりますか?

A. 国内に事務所・事業所がある限り課税対象 です。海外クライアントだけを相手にしている場合でも、日本国内で事業活動を行っているなら個人事業税が課されます。事業所所在地の都道府県が納税先です。

Q4. アフィリエイト業や YouTuber は法定業種に該当しますか?

A. 広告業(第 1 種、税率 5%) に該当するという運用が一般的です。広告収益が主な収入源で、事業性(継続性・反復性)があれば課税対象になります。雑所得で申告している場合は事業税の対象外ですが、事業所得で申告するなら課税対象。

Q5. 個人事業税は経費にできますか?

A. はい、必要経費に算入できます。所得税の確定申告で、個人事業税を支払った年の必要経費として計上できます。租税公課勘定で処理。

Q6. 法人成りすると個人事業税は払わなくてよくなりますか?

A. 個人事業税は払わなくなり、代わりに法人事業税(地方税)が課されます。法人事業税の税率は所得や法人形態により 3.5〜7% 程度(特別法人事業税を含めると約 9〜10%)。法人化判断は 法人化のタイミング法人化シミュレーター で詳細比較してください。

Q7. 290 万円の事業主控除は青色申告控除と併用できますか?

A. 個人事業税の計算では青色申告控除は使えません(事業主控除 290 万円のみ)。所得税・住民税の計算では青色申告 65 万円控除が使えるため、税目ごとに控除内容が異なる点に注意。

次に読むべき記事

まとめ

  • 開業届の 職業欄は具体的な業種名で記入(「フリーランス」「自営業」は NG)
  • 個人事業税は 法定 70 業種 に該当する場合のみ課税、税率は 3% / 4% / 5%
  • 計算式は (事業所得 − 290 万円) × 税率、青色申告特別控除は使えない
  • ライター・翻訳業など 法定業種に該当しない業種は非課税 の場合あり(都道府県により判定差)
  • 業種が変わったら 異動届出書で職業変更(廃業届ではない)

参考資料(公式情報)