開業届

開業届の屋号変更・住所変更の手続き|異動届出書の書き方

開業届提出後に屋号や事業所所在地を変更する場合の手続き。「個人事業の開業・廃業等届出書(異動)」の書き方、税務署・都道府県税事務所への届出を解説。

公開: 2026/5/5本記事には広告 (PR) を含みます

この記事で分かること

  • 屋号変更と住所変更で使う 異動届出書(個人事業の開業・廃業等届出書) の正しい書き方
  • 屋号だけ変える場合・住所だけ変える場合・両方変える場合の 3 パターン別 記入例
  • 所轄税務署が変わる住所変更で必要になる 「個人事業の事業開始等申告書(地方税)」 の併用
  • 屋号変更に伴う 副次的な手続き 5 つ(屋号付き口座、請求書、契約書、ウェブサイト、名刺)
  • 住所変更で必須となる 市区町村・都道府県への届出 と期限
  • 失敗例 4 つ(届出書の様式違い、変更日と提出日の不整合、口座名義の変更漏れ、消費税届出の連動失念)と回避策
  • FAQ:屋号複数所有、屋号の法的保護、開業届を再提出してはいけない理由

当記事は国税庁公式サイト・地方税法・所得税法を参照したリサーチベースの解説です。法律・税務の最終判断は所轄税務署または税理士にご確認ください。様式や届出期限は国税庁・各都道府県税事務所の改修により変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトを併せてご確認ください。

屋号変更・住所変更で使う届出書は「開業届と同じ様式」

意外と知られていない事実ですが、屋号変更や住所変更も「個人事業の開業・廃業等届出書」と同じ様式 を使います。様式の最上段にあるチェック欄で「開業」「廃業」とは別の用途として 「異動」 に相当する記入をする形です。

これに加えて、住所変更で 所轄税務署が変わる場合 は別途「個人事業の事業開始等申告書(地方税の異動)」を都道府県税事務所と市区町村に出します。地方税は国税と別管轄なので、税務署への提出だけでは完結しません。

法的根拠:所得税法第 229 条と地方税法

所得税法 229 条(開業・廃業等の届出義務)は 「事業の廃業、休業、変更等」も同条で対応 とされています。住所地・事業所等の変更は地方税法でも届出義務があります。

居住者は、新たに事業所得、不動産所得又は山林所得を生ずべき事業を開始した場合には、その事業の開始等の事実があつた日から 1 月以内に、その旨その他必要な事項を記載した届出書を、納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。

「事業の開始等の事実」には事業内容の変更や住所の変更も含まれる と国税庁は運用しています。

屋号変更・住所変更 3 パターン

パターン 1:屋号だけ変更(住所は変えない)

提出先提出書類期限
所轄税務署個人事業の開業・廃業等届出書(屋号欄に新屋号を記入)1 ヶ月以内(推奨)

地方税の手続きは原則不要(屋号は地方税法上の住所判定に影響しないため)。

パターン 2:住所だけ変更(屋号は変えない、所轄税務署が変わらない)

提出先提出書類期限
所轄税務署個人事業の開業・廃業等届出書(住所変更欄に新住所を記入)+ 所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書異動後遅滞なく

所轄税務署が同じ管轄内 で住所だけ変わる場合は、税務署への異動届出のみで OK。

パターン 3:所轄税務署が変わる住所変更(県外引越しなど)

提出先提出書類期限
旧所轄税務署所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書異動後遅滞なく
新所轄税務署(旧税務署からの引継ぎ後、追加届出は通常不要)
旧住所の都道府県税事務所個人事業税の異動届(廃業届)通常 10 日以内
新住所の都道府県税事務所個人事業税の事業開始等申告書通常 15 日以内
旧市区町村住民税の異動届出14 日以内
新市区町村住民票異動 + 国民健康保険異動14 日以内

所轄税務署をまたぐ住所変更は手続きが多い ため、引越し前にチェックリストを作って漏れを防ぎます。

屋号変更の書き方(記入例)

様式の入手先

国税庁:個人事業の開業・廃業等届出書 からダウンロードできます。e-Tax でも提出可能。

主な記入項目

【記入例:屋号変更】

提出先:○○税務署長殿

納税地:(現住所をそのまま)
氏名:(戸籍通り)
個人番号:(マイナンバー 12 桁)

届出の区分:「事業所等を新設、増設、移転、廃止した場合」を選択
            または余白に「屋号変更」と明記

旧屋号:山田デザイン事務所
新屋号:ヤマダクリエイティブスタジオ
変更日:2026 年 5 月 1 日

事業の概要:(既存の事業内容と同じか、関連変更点を記載)

公式様式には「屋号変更」専用のチェック欄がないため、余白または事業の概要欄に明記 するのが実務的です。e-Tax 提出時は備考欄に変更内容を記入します。

屋号変更に伴う副次的な手続き 5 つ

屋号を変えると、税務署届出だけでなく対外的な変更が連動して発生します。

1. 屋号付き銀行口座の名義変更

屋号付き口座を持っている場合、銀行に 屋号変更届 を提出します。必要書類は銀行ごとに異なりますが、概ね以下。

  • 異動届出書のコピー(または受信通知 PDF)
  • 印鑑(口座開設時の印)
  • 本人確認書類

口座番号は変わらず、名義のみ変更されるのが一般的です。屋号付き口座未開設なら、屋号変更を機に開設するのもよいです。

2. 請求書・領収書のテンプレート差替

屋号入りの請求書・領収書テンプレートを変更します。会計ソフト(freee / マネーフォワード)の屋号設定も忘れずに更新。会計ソフトの選び方は 会計ソフト比較 を参照。

3. 取引先への通知

主要取引先には 屋号変更通知 を送付します。請求先名義の変更は契約書の「契約者表示」とも関わるため、契約書の覚書交換が必要なケースも。

4. ウェブサイト・SNS の屋号表示

屋号入りのウェブサイトドメイン、SNS プロフィール、Google ビジネスプロフィールなどを更新。SEO 上は段階的なリダイレクトを推奨します。

5. 名刺・印鑑の作り直し

実物の名刺や角印を作り直します。これは屋号変更を機に統一感のあるブランドに更新するチャンスでもあります。

住所変更の書き方(記入例)

所轄税務署が変わらない場合

【記入例:住所変更(同一税務署管轄内)】

届出の区分:「事業所等を新設、増設、移転、廃止した場合」

納税地:(新住所を記入)
旧住所:東京都新宿区西新宿○丁目○-○
新住所:東京都新宿区高田馬場○丁目○-○
異動年月日:2026 年 5 月 1 日

提出書類:個人事業の開業・廃業等届出書(移転)
        + 所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書(任意)

所轄税務署が変わる場合

【記入例:住所変更(県外引越し、所轄税務署変更)】

提出書類:所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書

旧所轄税務署:新宿税務署
新所轄税務署:横浜中税務署
異動年月日:2026 年 5 月 1 日
旧納税地:東京都新宿区○○
新納税地:神奈川県横浜市中区○○

「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」は 旧所轄税務署に提出 すれば、税務署間で内部的に引継ぎが行われます。新所轄税務署に重複して出す必要はありません。

地方税の手続き(住所変更時)

国税の異動届出だけでは住所変更は完結しません。個人事業税 は都道府県税、住民税 は市区町村税のため、各窓口に別途届け出ます。

都道府県税事務所への届出

  • 旧住所の都道府県税事務所:個人事業税の異動届(廃業届)
  • 新住所の都道府県税事務所:個人事業の事業開始等申告書

東京都の場合は 東京都主税局:個人事業税 で書式が公開されています。期限は都道府県により異なりますが、10〜15 日以内 が一般的。

市区町村への届出

  • 旧住所の市区町村:転出届 + 住民税異動届
  • 新住所の市区町村:転入届 + 住民税届出 + 国民健康保険切替

住民税は 1 月 1 日時点の住所地 で課税されるため、年初の引越しは課税自治体の判定にも影響します。

失敗例 4 つと回避策

失敗 1:届出書の様式違い(廃業届で出してしまう)

屋号変更時に「廃業届」を出してしまうと、税務署側で 個人事業を完全終了 したと処理されます。これは青色申告の継続性を切る重大ミス。

回避策: 様式は「個人事業の開業・廃業等届出書」のままで、届出区分を「事業所等を新設、増設、移転、廃止」または余白に屋号変更と明記。「廃業」にチェックしない。

失敗 2:変更日と提出日の不整合

変更日(屋号を新屋号に切り替えた日)と提出日が大きくずれると、税務署から問い合わせが来ることがあります。

回避策: 変更日から 1 ヶ月以内 に届出書を提出。e-Tax なら即日完結。

失敗 3:屋号付き口座の名義変更漏れ

税務署への届出は済んだが、屋号付き口座の名義は旧屋号のまま残るケース。請求書の振込先と口座名義が一致しないと、取引先からの入金で混乱が起きます。

回避策: 税務署届出後、1 週間以内に銀行へ屋号変更届を提出

失敗 4:消費税届出の連動失念

課税事業者(消費税納税義務者、年商 1,000 万円超 or インボイス登録)の場合、住所変更で 「消費税の納税地の異動に関する届出書」 が必要です。

回避策: 「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」を所得税と消費税の両方 にチェックして提出。

FAQ

Q1. 屋号を 2 つ持つことはできますか?

A. 複数の屋号を運用することは可能 ですが、開業届に記入できる屋号は 1 つだけです。複数事業を展開する場合は、メインの屋号を 1 つ登録し、サブの屋号は確定申告書の事業所得欄に内訳として記載する運用になります。

Q2. 屋号変更で青色申告承認は引き継がれますか?

A. はい、引き継がれます。屋号変更や住所変更で青色申告の継続性は維持されます。一度「廃業届」を出して新規開業すると承認が切れるので、廃業届との混同に注意。

Q3. 屋号は商標権で守られますか?

A. 屋号自体は法的保護を受けません。同じ屋号を別の事業者が使い始めても止められません。法的に守りたいなら 商標登録(特許庁)または 商号登記(法務局)が必要です。商号登記は法人化時に登記簿に記載され、強い法的保護が得られます。

Q4. 引越したが個人事業税は旧住所の都道府県に払うのですか?

A. 個人事業税は 1 月 1 日時点の住所地(都道府県)に払います。年途中で引越した場合、その年の事業税は旧住所の都道府県に納税し、翌年から新住所の都道府県に切り替わります。

Q5. 屋号変更時に屋号付き請求書の取引先別変更タイミングは?

A. 変更日以降の請求から新屋号 に切り替えます。変更日前の請求書は旧屋号のままで OK。取引先には事前に変更通知を送り、変更日以降の振込先・請求先名義を共有します。

Q6. バーチャルオフィスから自宅に住所を戻す場合の手続きは?

A. 「個人事業の開業・廃業等届出書」で住所変更 を出します。バーチャルオフィスを完全解約する場合、バーチャルオフィス事業者との契約終了手続きも別途必要。バーチャルオフィスでの法人登記の注意点は バーチャルオフィスでの法人登記 を参照。

Q7. 屋号変更で会計ソフトのデータ移行は必要ですか?

A. 不要です。会計ソフトの屋号設定だけ更新すれば、過去データは引き継がれます。請求書テンプレートや帳票出力時の屋号表示が新屋号に切り替わります。

次に読むべき記事

まとめ

  • 屋号変更・住所変更は 「個人事業の開業・廃業等届出書」と同じ様式 で対応(廃業届ではない)
  • 所轄税務署が変わる住所変更は 国税 + 地方税(都道府県・市区町村) の 3 系統への届出が必要
  • 屋号変更には副次的に 口座名義・請求書・契約書・ウェブサイト・名刺 の更新が連動
  • 「廃業届」を間違って出すと 青色申告承認の継続性が切れる ので絶対避ける
  • 屋号自体は法的保護されないため、必要なら 商号登記(法務局)または商標登録(特許庁)

参考資料(公式情報)