税務・会計

電子帳簿保存法 2024 年完全義務化への対応|マイクロ法人がやるべき 5 つ

2024 年 1 月から完全義務化された電子帳簿保存法の対応。電子取引データの保存要件、検索機能の確保、タイムスタンプの利用、JIIMA 認証ソフトの活用を実務ベースで解説。

公開: 2026/5/5本記事には広告 (PR) を含みます

この記事で分かること

  • 電子帳簿保存法 2024 年(令和 6 年 1 月 1 日)の 完全義務化 の中身
  • 電子取引データの 保存 4 要件(真実性・可視性・検索性・改ざん防止)
  • マイクロ法人がやるべき 5 つの実務対応
  • タイムスタンプ vs 訂正削除履歴(事務処理規程)の使い分け
  • JIIMA 認証ソフト(freee / マネーフォワード / 弥生 等)の選び方
  • 失敗例 4 つ:紙印刷だけ・規程未整備・検索機能なし・猶予措置誤解
  • FAQ:紙原本可否・スキャナ保存・スマホ撮影・税務調査時の提示方法 など

当記事は国税庁「電子帳簿保存法一問一答」「電子帳簿保存法 取扱通達」、JIIMA(公益社団法人日本文書情報マネジメント協会)公式情報を参照したリサーチベースの解説です。最終的な運用判断は税理士または所轄税務署にご相談ください。

電子帳簿保存法の全体像

電子帳簿保存法(電帳法)は、税務関係帳簿書類を電磁的記録(電子データ)で保存する場合のルールを定めた法律です。 保存対象は大きく 3 種類に分類されます。

区分対象義務化
① 電子帳簿等保存自社で電子的に作成した帳簿・決算書類任意
② スキャナ保存紙で受領・作成した書類のスキャン保存任意
③ 電子取引データ保存メール・EDI 等で授受した電子データ義務(令和 6 年 1 月から完全義務化)

問題になるのは ③ 電子取引データ保存 で、令和 6 年 1 月 1 日以降は すべての法人・個人事業主に義務 として課されています。

電子帳簿保存法 第 7 条 所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、…当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を…保存しなければならない。

宥恕措置(紙印刷で代用可)は 令和 5 年 12 月 31 日で完全終了 しました。

電子取引とは何を指すか

法律上の「電子取引」とは、取引情報の 授受を電磁的方式により行う取引 をいいます(電帳法 第 2 条第 5 号)。 具体的には次のすべてが含まれます。

  • メール添付の PDF 請求書 / 領収書
  • Web からダウンロードした クレジットカード明細・通信費請求書
  • EDI 取引 のデータ
  • ネット通販(Amazon ビジネス、楽天市場、Yahoo!ショッピング等)の 領収書 PDF
  • チャット・SNS で受領した 請求書・見積書
  • 電子契約サービス(クラウドサイン、freee サイン等)で締結した契約書

つまり、メール添付 PDF を一度でも紙印刷で運用していたら、それは 法令違反状態 です。

電子取引データの保存 4 要件

1. 真実性の確保

改ざん防止措置 として、次のいずれかを実施する必要があります。

  • タイムスタンプの付与(受領後速やかに、または最長 2 ヶ月 + 7 営業日以内)
  • 訂正削除の記録が残るシステム(または訂正削除ができないシステム)の利用
  • 訂正削除に関する事務処理規程 の備付け

マイクロ法人は ③ の事務処理規程 を整備するのが最低コストです。

2. 可視性の確保

  • PC・モニター・プリンタ・操作説明書 が備え付けられている
  • 整然・明瞭にデータを 画面・書面に出力 できる

通常のオフィス環境ならクリア。

3. 検索機能の確保

データを 取引日・取引金額・取引先 の 3 項目で検索できる必要があります。

電子帳簿保存法施行規則 第 4 条第 1 項第 3 号 取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先により検索をすることができること。

ただし、売上 5,000 万円以下 の事業者には次の緩和措置があります。

  • 検索機能要件 すべて不要(税務調査時にデータを ダウンロード提示 できればよい)
  • 令和 6 年 1 月以降の改正で、当初の 1,000 万円から 5,000 万円に拡大

マイクロ法人のほとんどはこの緩和措置の対象です。

4. システム概要書の備付け

会計ソフト・電子取引保存システムを利用する場合、システムの概要を記載した書類 を備え付けること。 JIIMA 認証ソフトを使えば、認証情報自体が概要書の役割を果たします。

マイクロ法人がやるべき 5 つの実務対応

Step 1:受領経路の棚卸し

過去 3 ヶ月分のメール・クラウド請求書・経費を洗い出す。

  • メール添付 PDF 請求書(Adobe・Google Workspace・Slack 等の請求書)
  • AWS / GCP / Azure 等のクラウド利用明細
  • 楽天 / Amazon ビジネス等の領収書
  • 銀行明細・クレジットカード明細
  • ASP の利用明細(freee / Notion / Figma 等)

これらすべてが 電子取引データ保存の対象 です。

Step 2:保存場所の決定

候補は以下の 3 パターン。

パターン適合性理由
① 会計ソフトの電子取引保存機能freee / マネーフォワード / 弥生は JIIMA 認証あり
② 専用クラウドストレージBox / Dropbox 等、ただし検索機能と命名ルール要設計
③ ローカル PC のフォルダ命名ルール厳守 + バックアップ前提なら可、推奨度低

Step 3:ファイル命名ルールの統一

検索性を確保するための命名規則例:

20260415_株式会社サンプル_55000.pdf
(取引日)_(取引先)_(金額).pdf

会計ソフトを使う場合、メタデータでの管理になるためファイル名は自由ですが、ローカル保存運用なら命名ルール必須 です。

Step 4:事務処理規程の作成

国税庁が サンプル様式 を公開しています(電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程(法人の例))。

以下を記載:

  1. 適用範囲(対象者・対象データ・期間)
  2. 訂正削除の原則禁止
  3. 訂正削除を行う場合の手続(責任者承認・履歴保存)
  4. 規程違反時の措置

A4 で 1〜2 枚程度。社内規程として印刷・保管。

Step 5:会計ソフトとの連携設定

freee / マネーフォワード / 弥生はメール連携機能で電子取引データを自動取込できる。

  • メール転送ルールで「@invoice.example.com」のような専用アドレスへ自動転送
  • 受領 → 自動取込 → タイムスタンプ → 仕訳作成、の流れが自動化

タイムスタンプ vs 事務処理規程

タイムスタンプ方式

  • コスト:年 数千〜数万円(タイムスタンプ事業者と契約)
  • 手順:受領 → スタンプ付与 → 保存
  • 適合:取引数が多い、複数人が経理に関わる事業者

事務処理規程方式(マイクロ法人推奨)

  • コスト:0 円(国税庁サンプルを編集するのみ)
  • 手順:規程備付け → 通常の保存
  • 適合:マイクロ法人・1 人法人

マイクロ法人は 事務処理規程方式 が圧倒的に低コストです。

JIIMA 認証ソフトの選び方

JIIMA(日本文書情報マネジメント協会)が、電子帳簿保存法の要件を満たすソフトを認証しています。

ソフト電子取引ソフト法的要件認証月額特徴
freee 会計あり2,948 円〜メール自動取込・自動仕訳が強い
マネーフォワード クラウドあり3,278 円〜銀行・カード連携の充実度
弥生会計オンラインあり月額換算 2,500 円前後弥生 PAP 税理士との連携が容易
TKC 戦略経営者システムあり税理士経由税理士事務所利用の最大手

JIIMA 認証ソフトを選んでおけば、システム概要書の備付けや改ざん防止要件を ソフト側でクリア できます。

失敗例 4 つ

失敗 1: メール添付請求書を紙印刷だけしていた

「月初にまとめて印刷してファイリング」という従来運用 → 電子取引データの 電子保存義務違反

  • 紙印刷 + 電子原本破棄は完全 NG
  • 紙印刷 + 電子原本も別途保存していれば OK
  • 税務調査で電子データの提示を求められて初めて発覚するケースが多い

対策:紙印刷は補助手段として残してもよいが、電子原本を必ず保存

失敗 2: 事務処理規程の未整備

タイムスタンプも事務処理規程もないまま運用 → 真実性要件未達成、青色申告承認取消のリスクも。

  • 「会計ソフトを入れているから大丈夫」と誤解
  • ソフトがあっても、規程または訂正削除履歴の どちらかが必要

対策:国税庁サンプルを 30 分で編集 → 印刷 → 社内保管。会計ソフトに訂正削除履歴がある場合は規程不要。

失敗 3: 検索機能の要件を勘違い

「フォルダ検索ができるから OK」で運用 → 取引日・金額・取引先の 3 項目検索ができていない。

  • ファイル名を「Invoice_001.pdf」のような連番だけにしている
  • フォルダ階層で取引先を分けているが、金額検索ができない

対策:売上 5,000 万円以下なら 検索機能は不要(ダウンロード提示のみで OK)。命名ルールを統一するか、JIIMA 認証ソフトに移行。

失敗 4: 猶予措置の誤解(紙印刷でいつまでも代用)

「宥恕措置で当面紙印刷で OK」と認識 → 令和 5 年 12 月 31 日で 宥恕措置は完全終了

ただし、令和 6 年 1 月以降は 新たな猶予措置 が設けられました。

  • 「相当の理由」がある場合(システム未対応・人手不足等)
  • かつ、税務調査時にデータの ダウンロード提示と紙書面提示 ができる場合
  • 期限の定めなし(事実上の経過措置)

ただし、「相当の理由」を後から税務署に主張するのは難易度が高い ため、原則は電子保存運用に切替えるべきです。

マイクロ法人の現実的な構成

ほとんどのマイクロ法人にはこれで十分:

  • 会計ソフト:freee / マネーフォワード / 弥生(JIIMA 認証)
  • 改ざん防止:事務処理規程(国税庁サンプル)
  • 検索機能:売上 5,000 万円以下なら不要、ダウンロード提示で OK
  • 保存場所:会計ソフトの電子取引保存機能 + クラウドストレージのバックアップ

ローカル PC フォルダ + Excel 索引、という運用は労力対効果が悪いため非推奨。

FAQ

Q1. 紙で受領した請求書はどうすればよいですか?

A. 電帳法の電子取引保存義務の対象外 です。紙のまま保管すれば OK。

  • スキャナ保存(電帳法 ②)は任意制度
  • 紙のまま保存し続けるのが最もシンプル
  • ただし、保管スペースとの兼ね合いでスキャナ保存に移行するのも可

Q2. スマホで撮影した領収書はスキャナ保存になりますか?

A. はい。スマホ撮影もスキャナ保存制度の対象です。

  • 解像度 200dpi 以上、カラー画像(赤・緑・青の階調がそれぞれ 256 階調以上)
  • タイムスタンプ または訂正削除履歴のある 会計ソフトの経費精算機能 が必要
  • freee 経費・マネーフォワード経費等で対応可能

Q3. 税務調査で電子データの提示を求められたら?

A. 売上 5,000 万円以下なら ダウンロードしての提示 でクリア可能。

  • USB メモリ・CD-R に保存して提示、メール添付でも可
  • 検索機能要件は免除されているので、すべてのファイルを並べて提示でも OK
  • 取引日・金額・取引先で並べ替えできる状態が望ましい

Q4. クラウドストレージ(Dropbox / Box / Google Drive)での保存は適法ですか?

A. 適法ですが要件を満たすことが必要 です。

  • 改ざん防止措置(事務処理規程 or タイムスタンプ)
  • 検索機能(売上 5,000 万円以下なら緩和)
  • 可視性(プリンタ・PC で表示・印刷可能)

汎用クラウドストレージ単体では要件をすべて満たしにくいため、JIIMA 認証ソフトとの併用が推奨。

Q5. 保存期間はどれくらいですか?

A. 法人は 7 年間(欠損金繰越控除がある事業年度は 10 年間)。

  • 法人税法 第 126 条第 1 項、法人税法施行規則 第 59 条
  • 個人事業主は 7 年間(青色申告)または 5 年間(白色申告)
  • 起算日は事業年度終了日の翌日から 2 ヶ月経過した日

Q6. 違反した場合のペナルティは?

A. 直接的な罰金はありませんが、間接的なペナルティがあります。

  • 青色申告承認の取消(最も重い)→ 欠損金繰越控除等の特典喪失
  • 重加算税の 加重措置(10% 加算)(隠蔽・仮装と認定された場合)
  • 仕入税額控除否認(インボイス保存と併せて違反時)

Q7. 一人会社でも事務処理規程は必要ですか?

A. 必要です。社員数に関係なく適用されます。

  • 1 人法人でもタイムスタンプ or 事務処理規程 or 訂正削除履歴のいずれかが必要
  • 規程は A4 1〜2 枚で十分、印刷して書類に綴じておくだけ
  • 国税庁サンプルをそのまま会社名に置換して使用可

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まとめ

  • 令和 6 年 1 月から 電子取引データ保存は完全義務化(宥恕措置終了)
  • 真実性は 事務処理規程(国税庁サンプル)でカバー、コスト 0 円
  • 売上 5,000 万円以下のマイクロ法人は 検索機能要件は免除
  • JIIMA 認証ソフト(freee / マネーフォワード / 弥生)を使えば実務はほぼ自動化
  • 失敗例 4 つ(紙印刷だけ・規程未整備・検索機能誤解・猶予措置誤認)は予防可能
  • まずは 会計ソフト比較 で JIIMA 認証ソフトを選定

参考資料(公式情報)