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法人運営

法人名・サービス名の商標登録|マイクロ法人で取るべきか・費用感

屋号レベルのブランドでも、第三者の商標出願で使えなくなるリスクはある。J-PlatPat での先願検索、区分の選び方、自前出願(特許印紙 12,000 円〜)と弁理士依頼の費用差、登録までの 6〜8 ヶ月の流れを整理。

公開: 2026/5/14本記事には広告 (PR) を含みます

この記事で分かること

  • 商標登録の そもそもの保護対象(標章+指定商品・役務)と先願主義(商標法 第 8 条)
  • マイクロ法人で取るべきケース 5 つ・取らなくていいケース 3 つ
  • J-PlatPat での 先願検索の手順と区分(ニース分類)の選び方
  • 自前出願(特許印紙 12,000 円〜)と弁理士依頼(10〜15 万円)の費用差
  • 出願から登録までの 6〜8 ヶ月の流れと中間処理(拒絶理由通知)対応
  • 登録後の更新(10 年ごと)・侵害対応・ライセンス活用
  • FAQ 6 問(ロゴと文字商標の違い・海外展開・類似判断 等)

当記事は商標法・特許庁「商標審査基準」・J-PlatPat 公開情報に基づくリサーチ解説です。実際の登録可否は審査官判断によるため、登録性が微妙な案件は弁理士相談を推奨します。

商標登録は「先願主義」の世界

商標法 第 8 条により、 同一・類似商標について最初に出願した者が権利を取得します。先に使っていたかどうか(使用主義)は原則関係ありません。

つまり、屋号・サービス名・ロゴを長年使ってきても、他社が先に同じ商標を出願・登録してしまえば、 逆にあなたの方が使用差止め・損害賠償請求を受ける立場になり得ます。

特にマイクロ法人で SaaS・EC・コンテンツ事業を始める場合、ある程度ユーザー獲得が進んだ段階で同名サービスが商標登録に動くと、リブランディング費用が数百万〜数千万円規模で発生する可能性があります。

マイクロ法人で取るべきケース 5 つ

  1. SaaS・アプリ名で独自性のある名前(造語・組み合わせ語)
  2. EC で自社ブランド商品を販売する(商品名 + ロゴ)
  3. コンサル・スクールで商標化したいメソッド名を持つ
  4. AmazonOEM / 楽天で他社模倣を防ぎたい(ブランド登録 / Amazon Brand Registry に商標が必須)
  5. 将来 M&A・事業譲渡を視野に入れている(ブランド資産の評価対象になる)

取らなくていいケース 3 つ

  1. 個人名・代表者名そのもの(商標法 第 4 条 1 項 8 号で他人の氏名は登録不可)
  2. 一般的・記述的な名称(「東京コンサルティング」「美味しいパン屋」等は識別力不足で拒絶される確率が高い)
  3. 3 年以内の撤退・ピボットを織り込む実験的事業(登録費用が回収できない可能性)

J-PlatPat での先願検索

出願前に必ず 特許情報プラットフォーム(J-PlatPat) で先願調査を行います。

検索手順:

  1. J-PlatPat トップ → 「商標」 → 「商標番号照会」または「称呼検索」
  2. 称呼検索で **読み方(カタカナ)**を入力(例:「ホウジンカ」)
  3. 区分(後述)を指定して類似商標を抽出
  4. 同一・類似が見つかった場合は登録できない可能性が高い

ニース分類の区分

商標は標章だけでなく **指定商品・役務(=どの分野で使うか)**とセットで権利化されます。区分はニース国際分類で 1〜45 類。

  • 第 9 類:ダウンロード可能なソフト・アプリ
  • 第 35 類:広告・経営コンサル・小売
  • 第 36 類:金融・保険・不動産
  • 第 41 類:教育・セミナー・出版
  • 第 42 類:SaaS・コンピュータプログラム設計・SI

SaaS 事業なら 9 類 + 42 類 + 35 類の 3 区分が定番。1 区分増えるごとに特許印紙代が加算されます。

出願費用の比較

自前出願

電子出願システム(インターネット出願)または書面出願。費用は 特許印紙代のみ

項目金額
出願料(1 区分)12,000 円
出願料(2 区分目以降、1 区分追加)8,600 円
登録料(10 年分、1 区分)32,900 円
登録料(5 年分割、1 区分)17,200 円

1 区分 1 件で出願〜10 年登録まで 約 45,000 円。3 区分なら約 80,000 円。

弁理士依頼

項目相場
出願手数料(1 区分)5〜10 万円
登録時成功報酬3〜8 万円
中間処理(拒絶理由対応)3〜10 万円

1 区分通常案件で トータル 12〜20 万円程度。複雑案件・拒絶対応が入ると 30 万円超になることも。

判断基準

  • 単純な造語・先願に類似なし → 自前で十分
  • 類似が複数ある / 区分判断に迷う / 拒絶理由対応の経験なし → 弁理士推奨
  • 区分が 3 つ以上、グローバル展開予定あり → 弁理士推奨(マドプロ出願も視野)

登録までの流れ

[1] 出願(J-PlatPat 検索 + 出願書作成)
   ↓ 即日〜 1 ヶ月
[2] 方式審査(書類不備チェック)
   ↓ 約 2 ヶ月
[3] 実体審査(識別力・類否判断)
   ↓ 5〜8 ヶ月(2026 年現在の平均)
[4-a] 登録査定 → 30 日以内に登録料納付 → 登録
[4-b] 拒絶理由通知 → 40 日以内に意見書・補正書提出 → 再審査

拒絶理由通知が来た場合の対応:

  • 第 3 条 1 項 3 号(識別力なし):使用実績を疎明(売上資料・広告データ)
  • 第 4 条 1 項 11 号(先願類似):指定商品・役務を限定減縮、または弁理士に意見書作成依頼
  • 第 4 条 1 項 7 号(公序良俗):表現を変更

中間処理は弁理士に依頼するのが現実的です。

登録後にやること

  1. 更新登録:登録から 10 年で権利が切れる。更新料 43,600 円/区分(10 年分)。
  2. 使用実績の記録:3 年間不使用だと取消審判(商標法 第 50 条)で取り消されるリスクあり。広告・販売実績を継続して残す。
  3. 侵害監視:定期的に J-PlatPat で類似後願がないかチェック。発見時は警告書送付 → 異議申立 → 訴訟。
  4. ライセンス・譲渡:登録商標は資産化できる。子会社・関連事業者へのライセンスや、事業譲渡時の評価対象になる。

FAQ

Q1. ロゴと文字、どちらで出すべき? A. 防御範囲が広いのは 文字商標(読み方が同じなら類似と判断される)。ロゴはデザイン変更時に再出願が必要。両方取るのが理想だが、予算上は文字商標を優先。

Q2. 海外でも保護される? A. 日本の商標登録は日本国内のみ有効。海外展開予定があるならマドリッドプロトコル(マドプロ)経由で複数国一括出願(基礎出願 + 約 5〜10 万円/国)が効率的。

Q3. 類似判断はどう決まる? A. 商標審査基準では「称呼(読み方)」「外観」「観念(意味)」の 3 要素で総合判断。読み方が同じだと外観が違っても類似と判断される傾向。

Q4. 出願中の表記は? A. TM(Trademark)マークは出願中・未登録でも使える。 ®(Registered)は登録後のみ。誤用は不正競争防止法違反になり得る。

Q5. 後願者を排除した後の使用は? A. 商標権者は差止請求権(商標法 第 36 条)・損害賠償請求権(第 38 条)を行使可能。実害が大きい場合は訴訟だが、まずは警告書 → 交渉が一般的。

Q6. 個人名義と法人名義どちらで取る? A. 法人名義推奨。個人名義だと法人の事業活動として使用したことにならず、3 年不使用取消のリスク + 相続時の手続き複雑化。すでに個人名義で取得済みなら名義変更(移転登録)可能。


商標は「事業が育つ前に取る」ものです。出願コストは数万円で済むのに対し、後追いで取られた時のリブランド損失は数千万円規模。事業計画と並行して早期に検討すべき固定費です。商標 + 法人税務 + 知財戦略を統合的に見られる専門家は税理士マッチング比較から弁理士提携のある事務所を選ぶのが効率的です。