まず3分で全体像
- 法人にかかる 3 種類の税金(法人税・住民税・事業税)の全体像
- 法人税の課税ベース「益金 - 損金」と会計利益とのズレ
- 中小法人に適用される 軽減税率 15% の仕組みと適用要件
- 実効税率がよく言われる 「約 33%」 になる根拠と所得帯別の実効税率
- 個人事業の所得税との計算方法・税率構造の違い
- 失敗例 4 つ:申告期限・予定申告漏れ・損金不算入見落とし・電子申告未対応
- FAQ:青色申告承認・欠損金繰越・中間申告・赤字法人 など 7 問
- 法人税法・地方税法・租税特別措置法の根拠条文と国税庁公式リソース
当記事は国税庁・東京都主税局・総務省・財務省の公式情報(2026 年時点)を参照したリサーチベース解説です。具体的な納税判断は税理士・所轄税務署にご確認ください。税制は毎年改正されるため、適用年度の最新情報は必ず公式でご確認ください。
法人にかかる税金は大きく 3 種類
法人化すると、利益に対して課される税金は次の 3 つに整理できます。
| 区分 | 税金名 | 課税主体 | 根拠法 |
|---|---|---|---|
| 国税 | 法人税 | 国 | 法人税法 |
| 国税 | 地方法人税 | 国(地方交付の財源) | 地方法人税法 |
| 地方税 | 法人住民税 | 都道府県・市区町村 | 地方税法 |
| 地方税 | 法人事業税 | 都道府県 | 地方税法 |
| 国税 | 特別法人事業税 | 国(事業税に上乗せ) | 特別法人事業税法 |
このほか、消費税の課税事業者となれば 消費税および地方消費税 が別建てで発生します(基準期間の課税売上高 1,000 万円超、または資本金 1,000 万円以上の新設法人など、一定要件あり)。
これらをまとめた実質的な税負担率を 「実効税率」 と呼びます。
法人税の基本構造
課税対象は「所得」(益金 - 損金)
法人税は 「各事業年度の所得」 に対して課税されます(法人税法第 21 条)。所得は次の式で求めます。
所得 = 益金 - 損金
会計上の「利益」と税務上の「所得」は 完全には一致しません。会計利益から税務調整(加算・減算)を経て課税所得が確定します。代表的な調整項目:
| 調整項目 | 内容 | 加減 |
|---|---|---|
| 交際費の損金不算入額 | 中小法人は年 800 万円までは全額損金、超過分は不算入 | 加算 |
| 減価償却超過額 | 税法上の限度額を超える部分 | 加算 |
| 役員給与の不相当に高額な部分 | 同業類似法人との比較で過大と判定 | 加算 |
| 寄附金の損金不算入額 | 一般寄附金の限度超過分 | 加算 |
| 受取配当等の益金不算入額 | 二重課税排除のため一部除外 | 減算 |
| 欠損金の繰越控除 | 過去 10 年以内の青色欠損金を当期所得から控除 | 減算 |
このため「黒字 = 法人税が発生する」とは限らず、過去の赤字を引き継いだ法人は数期にわたり法人税ゼロ ということもあります。
中小法人の軽減税率
資本金 1 億円以下の 中小法人(法人税法第 66 条第 2 項)には、所得 800 万円以下の部分に 軽減税率 15%(本則は 23.2%)が適用されます。租税特別措置法第 42 条の 3 の 2 による特例です。
| 課税所得 | 法人税率 |
|---|---|
| 800 万円以下の部分 | 15%(軽減税率) |
| 800 万円超の部分 | 23.2%(本則) |
ただし、以下の 「適用除外事業者」 には軽減税率が使えません(過去 3 期平均所得が年 15 億円超など)。マイクロ法人ではまず該当しないので、実質的に 資本金 1 億円以下なら 15% と覚えれば十分です。
地方法人税
法人税額に 10.3% を乗じたものが地方法人税。これは国税ですが、地方財政の財源として地方に再配分されます。実効税率を算出するときは法人税相当として上乗せされます。
法人住民税の構造
法人住民税は次の 2 つから成ります(地方税法第 51 条等)。
- 法人税割: 法人税額 × 税率(標準 7.0%、東京都は超過税率 7.0% / 特別区は均等割と一体)
- 均等割: 資本金等の額と従業員数に応じた 定額(マイクロ法人で 最低 年 7 万円)
均等割の代表的な金額(東京都・23 区内・標準):
| 資本金等 | 従業員 50 人以下 | 従業員 50 人超 |
|---|---|---|
| 1,000 万円以下 | 7 万円 | 14 万円 |
| 1,000 万円超〜1 億円以下 | 18 万円 | 20 万円 |
| 1 億円超〜10 億円以下 | 29 万円 | 53 万円 |
均等割は 赤字でも必ず発生 します。「マイクロ法人で赤字でも年 7 万円の維持コスト」と言われるのはこの均等割のことです。
法人事業税 + 特別法人事業税
事業税は所得に応じた税率(資本金 1 億円以下の中小法人で標準 3.5〜7.0%)。特別法人事業税は事業税の一部を国に上乗せ徴収するもので、事業税額(基準法人所得割額)に 37% を乗じます。
| 課税所得 | 事業税率(標準) |
|---|---|
| 400 万円以下 | 3.5% |
| 400 万円超〜800 万円以下 | 5.3% |
| 800 万円超 | 7.0% |
事業税は 損金算入できる (法人税法第 38 条の反対解釈)のが特徴で、翌年度の損金として処理します。
合算すると所得に対して 約 7〜10% の負担になります。
実効税率「約 33%」の内訳
中小法人で課税所得が 800 万円超のレンジを想定した実効税率は次のように積み上がります(東京都・資本金 1 億円以下のモデル)。
| 内訳 | 実効負担 |
|---|---|
| 法人税 | 約 23% |
| 地方法人税 | 約 2.4% |
| 法人住民税(法人税割) | 約 1.6% |
| 事業税 + 特別法人事業税 | 約 7〜10% |
| 合計(実効税率) | 約 30〜34% |
所得 400〜800 万円ゾーンでは軽減税率の影響で実効税率は 約 22〜25% まで下がります。所得 400 万円以下のゾーンではさらに事業税の段階税率が効いて 約 21〜23%。
詳しい試算は 法人化シミュレーター で自分の数字を当てはめてください。
個人事業の所得税との違い
| 項目 | 個人事業(所得税) | 法人(法人税) |
|---|---|---|
| 税率の構造 | 累進課税 5〜45% | ほぼフラット 15 / 23.2% |
| 住民税 | 一律 10% | 法人税割 + 均等割 |
| 事業税 | 業種により 3〜5% | 約 7〜10% |
| 損失繰越 | 青色で 3 年 | 10 年(平成 30 年 4 月以降開始事業年度) |
| 自分への給料 | 経費にできない | 役員報酬として経費化可 |
| 配偶者・親族への給料 | 専従者給与(届出・要件あり) | 役員報酬・給与(要件はゆるい) |
| 赤字時の最低負担 | 0 円 | 均等割 7 万円〜 |
| 消費税の納税義務 | 基準期間 1,000 万円超で課税 | 同左(新設法人は別途要件) |
| 退職金 | 自分には支払不可 | 役員退職金として支払可 |
所得が大きくなるほど 法人の方が税率の上限が低く有利、所得が小さいうちは 個人の方が累進率の下限が低く有利、というのが大原則です。
いつから法人化が税負担で有利になるか
ざっくりした目安:
- 課税所得 〜400 万円: 個人の方が安い
- 課税所得 400〜800 万円: 拮抗、その他要素で判断
- 課税所得 800 万円〜: 法人化で軽減税率 15% が効き始める
- 課税所得 1,000 万円〜: 法人化の節税メリットが維持コストを十分上回りやすい
ただしこれは 税金だけ の話で、社会保険料・退職金積立・消費税免税期間の活用などを含めると損益分岐点は前後します。詳しくは 法人化のメリット・デメリット を参照してください。
法人税の申告と納税スケジュール
確定申告の期限
事業年度終了の日の翌日から 2 ヶ月以内 に、所轄税務署へ申告書(別表 1〜5 等)を提出し、納税まで完了する必要があります(法人税法第 74 条)。
例:3 月決算法人なら 5 月 31 日まで。
申告期限の延長申請(1 ヶ月)も可能ですが、納税は本来の期限までに行わないと利子税が発生します。
中間申告(予定申告)
前事業年度の法人税額が 20 万円超 の場合、事業年度開始から 6 ヶ月経過後 2 ヶ月以内に 中間申告 が必要です(法人税法第 71 条)。
中間申告は次のいずれか:
- 予定申告:前期実績の半額をそのまま納付(ほぼ機械的)
- 仮決算:当期上半期の実績で計算し直して申告
予定申告は 申告書を出さなくても 自動的に納付書が送られてきますが、納付期限を過ぎると延滞税の対象になります。
申告区分(青色 / 白色)
法人を設立して 3 ヶ月以内(または事業年度終了の日のいずれか早い日まで)に 青色申告承認申請書 を提出すると、青色申告法人になれます。
青色申告のメリット:
- 欠損金の 10 年繰越控除
- 30 万円未満の少額減価償却資産の即時償却
- 各種税額控除の適用(中小企業投資促進税制など)
- 推計課税の禁止
マイクロ法人でも 必ず青色申告承認申請 を出すべきです。提出忘れで白色申告だと、欠損金繰越が使えず損です。
よくある失敗とリカバリー
失敗 1: 申告期限を 1 日でも過ぎて青色申告取消
法人税の申告期限は事業年度終了日の翌日から 2 ヶ月以内。これを過ぎると:
- 無申告加算税(納税額の 15〜20%)
- 延滞税(年 7.3〜14.6%)
- 2 期連続の期限後申告で青色申告承認取消(法人税法第 127 条第 1 項第 4 号)
青色申告を取り消されると、その後 10 年間の欠損金繰越控除を失い、設立赤字を後年に持ち越せなくなります。マイクロ法人で初年度設立赤字 200 万円を持っていた場合、軽減税率 15% で計算すると 30 万円の節税機会を失う ことになります。
対策:
- カレンダーに事業年度終了日 + 60 日を必ず登録
- 期限延長申請(特例の場合 1 ヶ月、災害等で更に延長可)を活用
- 申告期限 1 ヶ月前の段階で税理士・申告ソフトで仕上げ作業を完了させる
失敗 2: 予定申告の納付漏れ
前期の法人税額が 20 万円を超えた翌期は予定申告(中間申告)が必要です。税務署から納付書は送られてきますが、申告書は自分で出さなければ申告漏れ とみなされます。
実務的には「申告書を出さなければ前期実績で予定申告したものとみなす」運用ですが、納付期限を過ぎると延滞税対象です。
対策:
- 前期の法人税額が 20 万円超かどうかを期首にチェック
- 6 ヶ月経過時点で「中間申告月だ」とリマインダー
- freee 申告 / MF 法人税の予定申告機能で自動算出
失敗 3: 損金不算入項目の見落とし
会計上は経費でも税務上は損金にならない項目を見落とすと、税務調査で 過少申告加算税 10〜15% + 延滞税が課されます。
代表的な見落とし:
- 役員報酬で 定期同額給与 になっていない部分(期中変更分など)
- 役員賞与(事前確定届出を出していない場合は全額損金不算入)
- 過大な役員退職金(最終報酬月額 × 在任年数 × 功績倍率の妥当範囲超過)
- 一括計上した 資産計上すべき支出(10 万円以上の備品など)
- 使途不明金(領収書なし・相手方不明の支出)
対策:
- 役員報酬は事業年度開始から 3 ヶ月以内に株主総会で決定し、以後固定
- 役員賞与は 事前確定届出給与 を税務署に提出
- 10 万円以上の購入は固定資産台帳に登録(青色申告の少額特例 30 万円未満の即時償却を活用)
失敗 4: 電子申告(e-Tax)未対応で青色取消リスク
2020 年 4 月 1 日以後開始する事業年度から、資本金 1 億円超 の大法人は電子申告が義務化(マイクロ法人は対象外)。ただし、マイクロ法人でも以下の理由で電子申告が事実上必須化しています:
- 紙提出だと税務署への往復・郵送コストが高い
- 電子申告なら 24 時間 365 日 提出可能(期限ギリギリの夜間提出も可)
- 電子帳簿保存法の優遇措置が受けやすい
対策:
- 法人設立直後に e-Tax 利用者識別番号 を取得(無料・オンラインで完結)
- 法人代表者の マイナンバーカード(電子証明書) を準備
- freee 申告 / MF 法人税 / 弥生会計の申告連携機能を使用
電子申告未対応のまま紙提出を続けると、確定申告書受付印のもらい忘れや郵送事故で「申告したつもりが届いていなかった」事案が起きます。
Q&A:読者からの疑問
Q1. 法人を設立したら最初に出すべき税務書類は何ですか?
A. 設立後 2 ヶ月以内(または最初の事業年度終了日のいずれか早い日まで)に、所轄税務署へ以下を提出します。
| 書類 | 提出期限 |
|---|---|
| 法人設立届出書 | 設立後 2 ヶ月以内 |
| 青色申告承認申請書 | 設立後 3 ヶ月以内 |
| 給与支払事務所等の開設届出書 | 設立後 1 ヶ月以内 |
| 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 任意(半年に 1 回納付に変更) |
都道府県・市町村にも法人設立届を提出。詳しくは 国税庁:内国普通法人等の設立の届出 を参照。
Q2. 欠損金(赤字)は何年繰り越せますか?
A. 平成 30 年 4 月 1 日以後 に開始する事業年度で生じた青色欠損金は 10 年間 繰越控除できます(法人税法第 57 条)。それ以前は 9 年でした。
例:設立初年度に 300 万円の赤字 → 翌年度黒字 200 万円 → 翌年度の所得から 200 万円控除(残 100 万円は翌々年度以降に繰越可)。
繰越控除の要件:
- 青色申告書 を提出していること(白色は使えない)
- 欠損金が発生した期の 帳簿・証憑 を 10 年間保存
- 欠損金発生年度から連続して 確定申告書を提出 していること
Q3. 中間申告(予定申告)は必ず必要ですか?
A. 前事業年度の 法人税額が 20 万円以下 なら不要です(法人税法第 71 条)。
中間申告が必要な場合:
- 前期法人税額の半額を予定申告として納付(事業年度開始から 8 ヶ月以内)
- または仮決算(当期上半期の実績で算出)
- 申告書未提出でも前期実績で予定申告とみなされる
新設法人の 初年度 は前期がないため中間申告は不要。2 期目から該当します。
Q4. 赤字でも申告は必要ですか?
A. 必須です。所得 0 円・赤字でも、確定申告書を期限内に提出する必要があります(法人税法第 74 条)。
赤字でも発生する負担:
- 法人住民税の 均等割(最低 年 7 万円)
- 法人事業税の 資本割・付加価値割(資本金 1 億円超の外形標準課税対象法人のみ)
赤字でも青色申告書を期限内に出さないと欠損金繰越控除を失うため、必ず申告。
Q5. 役員報酬はいつ決めて、いつ変更できますか?
A. 事業年度開始から 3 ヶ月以内 に株主総会で決定し、その後 1 年間は同額(定期同額給与)を維持する必要があります(法人税法第 34 条)。
期中での変更が損金算入できる例外:
- 臨時改定事由:役員の地位変更(昇格・降格)、職務内容の重大な変更
- 業績悪化改定事由:継続的な業績不振による減額(債権者・株主との関係が問われる場合)
通常の業績調整目的での期中増減は 損金不算入 となり、税務上は経費にできません。
Q6. 法人税の節税で最も効果が大きいものは?
A. マイクロ法人では以下の優先順位:
- 役員報酬の最適化:会社利益 + 個人所得の合計税負担を最小化
- 小規模企業共済 / 経営セーフティ共済:個人 / 法人の所得控除・損金算入
- 配偶者・親族への適正な役員報酬:所得分散効果
- iDeCo / 企業型 DC:老後資金 + 所得控除のダブル効果
- 役員社宅・出張旅費規程:法人での経費化と個人での所得圧縮
詳しくは 法人化のメリット・デメリット を参照。
Q7. 税務調査はどのくらいの頻度で来ますか?
A. 国税庁統計によると、法人全体での 実地調査率は年 3〜4% (3 年に 1 回が目安と言われた時代から実調率は低下傾向)。マイクロ法人だと 5〜10 年に 1 回 が現実値ですが、以下の場合は確率が上がります:
- 売上高が急激に増加・減少
- 同業他社と比べて利益率が低すぎる
- 多額の交際費・外注費が継続
- 還付申告(消費税還付など)
- 異業種との取引が異常に多い
調査が来た場合の対応は 税理士の選び方 の Q2 を参照。
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- 法人化のメリット・デメリット:税金以外も含めた全体像
- 法人化のタイミング:所得 800 万円ラインの判断軸
- 税理士の選び方:申告を依頼する場合の事務所選定
- 法人会計ソフト比較:自力申告 / 税理士連携の前提環境
- 法人化シミュレーター:自分の数字で実効税率を試算
この記事のまとめ
- 法人にかかる税金は 法人税・住民税・事業税 の 3 種類(地方法人税・特別法人事業税を含めると 5 種類)
- 中小法人は所得 800 万円以下に 軽減税率 15%、超過分は 23.2%
- 実効税率は中小法人で 約 22〜34%(所得帯による)
- 赤字でも均等割 年 7 万円 は必ず発生
- 所得 800 万円超で個人より法人の方が税率上有利になりやすい
- 申告期限・予定申告・損金不算入・電子申告対応の 4 つの実務リスク は全て予防可能
- 設立直後の 青色申告承認申請 が後年の節税余地を決定する